
Model Context Protocol (MCP) とは?AI ツールの「USB-C ポート」をアーキテクチャ・主要プリミティブ・Sales Claw 視点で徹底入門
MCP は Anthropic が 2024 年 11 月に発表し 18 ヶ月で業界標準になった LLM アプリ拡張プロトコル。Host / Client / Server 3 層と JSON-RPC 2.0、6 プリミティブの設計、主要 AI ツールの対応状況、Sales Claw を MCP サーバ化する実装イメージ、Tool 安全性のリスクと安全設計を業界横断で徹底解説します。

中澤 圭志
@keishi_nakazawaSales Claw 開発者

Key Facts
仕様バージョン
2025-11-25 (現行) / 初版 2024-11-25 発表
発表元
Anthropic (D. Soria Parra + J. Spahr-Summers)
役割 A (Host)
Claude / ChatGPT / VS Code / Cursor / Gemini CLI 等 LLM 側
役割 B (Server)
Filesystem / Git / DB / API / Slack 等のツール・データ側
「Model Context Protocol (MCP) って、Claude / ChatGPT / Cursor / VS Code / Gemini CLI 全部で名前を見かけるけど、結局これは何で、なぜ業界標準になったのか? そして AI 営業自動化に組み込むとしたら、どう設計すればいいのか?」—— 本記事ではこの根本的な疑問に対し、MCP 公式仕様 (2025-11-25 版) と Anthropic / OpenAI / Google の一次ドキュメントを参照しながら、Sales Claw 開発者視点でアーキテクチャ・主要プリミティブ・実装イメージ・運用リスクを通しで解説します。
2024 年 11 月 25 日に Anthropic が発表した Model Context Protocol (MCP) は、それから 1 年半が経った 2026 年 5 月時点で、Claude Code・ChatGPT (Apps)・Codex・Gemini CLI・Cursor・VS Code・Zed・Replit といった主要 AI 開発ツールすべてに採用される、事実上の業界標準になっています。公式サイトは MCP を 「AI アプリケーションのための USB-C ポート」 と表現していますが、これは比喩としての分かりやすさを優先した説明にすぎず、その裏には JSON-RPC 2.0 ベースの状態付きセッションプロトコルと Host / Client / Server の 3 層分離という、Language Server Protocol (LSP) を強く意識した堅実な設計があります。
本記事は modelcontextprotocol.io 公式仕様 (2025-11-25 版)・modelcontextprotocol/specification GitHub リポジトリ・modelcontextprotocol/servers GitHub リポジトリ・Anthropic Newsroom (2024-11-25 MCP 発表)・Claude Code MCP Docs (code.claude.com)・OpenAI MCP Docs (developers.openai.com/api/docs/mcp)・Gemini CLI MCP Docs (geminicli.com) を一次情報として参照しています。前日リリース速報の claude agents × codex remote-control 並列運用記事 や、Claude Code 個別のツール解説である Claude Code スラッシュコマンド 81 コマンド整理記事 を読まれた方は、本記事を「その下にある共通プロトコル層」として読むと立体的に理解できます。Sales Claw の クイックスタートガイド も併読しておくと、後半の実装イメージが腹落ちしやすくなります。
1. MCP (Model Context Protocol) とは何か——「AI 用 USB-C ポート」の比喩を超えて
Model Context Protocol (以下 MCP) の公式定義は modelcontextprotocol.io によれば次の通りです。
この一文を分解すると、「(a) AI アプリケーション側」と「(b) 外部システム側」のあいだに、「(c) オープンな標準プロトコル」を 1 層挟む、という構造が見えます。USB-C の比喩は、ハードウェア接続が 「メーカー独自端子の組み合わせ爆発 → USB-C 一本で済む」という歴史を踏んだのと同じ問題を、AI とツールの組み合わせで解決しに来ている、という意味で正確です。
ただし、ここで止まると MCP の真の設計判断を見落とします。仕様書 (modelcontextprotocol.io/specification) は明確に、MCP がLanguage Server Protocol (LSP) からインスピレーションを受けたと書いています。
LSP は 2016 年に Microsoft が VS Code のために設計したもので、それまで「エディタ × 言語」のフラグメンテーション (N × M 問題) を、「エディタ ← LSP → 言語サーバ」という 1 層プロトコル抽象化で解決しました。MCP はこの構図を「LLM アプリ × データソース/ツール」のフラグメンテーションにそのまま当てはめた、と理解するのが正確です。

この「LSP の AI 版」という見方は、後で出てくる capability negotiation (機能ネゴシエーション) や stateful session (状態付きセッション) の設計判断を腹落ちさせる鍵になります。Claude の独自仕様・OpenAI の独自仕様・Google の独自仕様で別々に作るのではなく、Anthropic 主導で「皆で同じプロトコルを使えるようにしよう」と提案したのが MCP です。
2. 公式情報で確認できる MCP の歴史と現行仕様 (2024-11-25 → 2025-11-25)
MCP の歴史的な流れを公式情報で押さえておきます。
2024-11-25: Anthropic による MCP 発表
2024 年 11 月 25 日、Anthropic は公式 Newsroom で「Introducing the Model Context Protocol」を発表しました。発表時点の主要ポイントを公式記事から拾います。
- 創設者: MCP は Anthropic の David Soria Parra と Justin Spahr-Summers が中心となって設計
- 動機: AI モデルが「情報サイロやレガシーシステムの裏側」に閉じ込められた知識へアクセスできない問題を解決する
- 発表時の支持者: 早期採用企業として Block、Apollo、開発ツール企業として Zed、Replit、Codeium、Sourcegraph
- 同時公開: Google Drive、Slack、GitHub、PostgreSQL などの主要システム向けの「pre-built MCP server」も同時公開
2024-11 → 2025-11: 仕様改訂 1 年の歩み
modelcontextprotocol/specification リポジトリの schema フォルダにはバージョン別の TypeScript schema が積まれており、おおよその系譜は以下のとおりです (リポジトリ上の schema フォルダの命名規則に基づく整理)。
| 仕様バージョン | 時期 | 主な追加・変更 |
|---|---|---|
| 2024-11-05 | 2024 年 11 月 | 発表時の初版 (Resources / Tools / Prompts / Sampling) |
| 2025-03-26 | 2025 年 3 月 | Streamable HTTP transport の正式化、OAuth 2.0 認可フロー強化 |
| 2025-06-18 | 2025 年 6 月 | Elicitation (サーバからユーザへの追加情報要求) 導入 |
| 2025-11-25 | 2025 年 11 月 (発表 1 周年) | 現行版。スキーマ整理、capability negotiation の明確化、セキュリティ原則の本文格上げ |
2026 年 5 月時点で参照すべき仕様は 2025-11-25 版です。公式仕様ページ (modelcontextprotocol.io/specification) も同バージョンを基準に記述されており、Architecture / Base Protocol / Server / Client / Contributing の 5 セクション構成になっています。
公式リファレンスサーバ 7 種とエコシステム
modelcontextprotocol/servers リポジトリには 公式リファレンス実装が 7 種あります。これらは「MCP がどう振る舞うべきか」のお手本であり、自社で MCP サーバを書く際にもっとも参考にすべき実装です。
| 公式サーバ | 役割 | 主に使う Primitive |
|---|---|---|
| Everything | リファレンス兼テストサーバ。全 Primitive を例示 | Resources / Tools / Prompts |
| Fetch | Web コンテンツ取得と Markdown 化 | Tools |
| Filesystem | アクセス制御付きの安全なファイル操作 | Resources / Tools |
| Git | リポジトリの読込・検索・操作 | Tools / Resources |
| Memory | 知識グラフベースの永続メモリ | Tools / Resources |
| Sequential Thinking | 思考連鎖の補助 (chain-of-thought 構造化) | Tools |
| Time | 時刻・タイムゾーン変換 | Tools |
サードパーティのコミュニティ実装は 150 を優に超える数がリポジトリ README からリンクされており、Anthropic Directory (claude.ai/directory) には公式レビュー済みのリモート MCP サーバが並んでいます。Slack、Notion、Linear、Figma、Google Drive、PostgreSQL、Sentry、Datadog、Sentry、Statsig、Cloudflare……主要 SaaS のほぼすべてに「公式または準公式の MCP サーバ」が用意されている状態です。

3. アーキテクチャ——Host / Client / Server の 3 層と JSON-RPC 2.0
MCP 仕様 (modelcontextprotocol.io/specification/2025-11-25/architecture) のアーキテクチャ定義を要約すると、次のような 3 層構造になっています。
Host (ホスト)
- 定義: LLM アプリケーションのプロセス全体を司るコンテナ兼コーディネータ
- 具体例: Claude Desktop、Claude Code、ChatGPT、Cursor、VS Code、Zed、Gemini CLI など
- 責務: 複数 Client インスタンスの生成と管理 / ユーザ同意の取得 / セキュリティポリシーの執行 / LLM サンプリングの統括 / 複数 Server からのコンテキスト集約
Client (クライアント)
- 定義: Host が生成し、特定の Server と 1:1 のセッションを保持するコネクタ
- 責務: 状態付きセッションの確立 / プロトコルネゴシエーション / メッセージの双方向ルーティング / サブスクリプションと通知の管理 / Server 間のセキュリティ境界の維持
Server (サーバ)
- 定義: 専門的なコンテキストや機能を提供する独立プロセスまたはリモートサービス
- 具体例: Filesystem サーバ、Git サーバ、Slack サーバ、Postgres サーバ、Sentry サーバ……そして将来的には Sales Claw サーバ
- 責務: Resources / Tools / Prompts を公開する / sampling を Client 経由で要求する / セキュリティ制約に従う
JSON-RPC 2.0 とトランスポート
メッセージング層は JSON-RPC 2.0 で、Client-Server 間で双方向の request / response / notification をやり取りします。トランスポートは以下の 3 種類が標準化されています:
| トランスポート | 用途 | 典型シナリオ |
|---|---|---|
| stdio | ローカルプロセス間通信 (標準入出力) | Filesystem / Git のようにユーザの PC で動く Server |
| Streamable HTTP | HTTP POST + SSE で双方向通信 | Slack / Notion / Sentry のような SaaS のリモート Server |
| SSE (legacy) | Server-Sent Events ベースの旧版リモート通信 | 既存実装の互換 (新規は Streamable HTTP 推奨) |
セッションライフサイクル: 初期化 → ネゴシエーション → セッション → 終了
MCP セッションは「initialize」リクエストで始まります。Client が自身の能力 (capabilities) を申告し、Server が応答として自身の能力を返す——いわゆる capability negotiation です。これが「Server は tools を持っているか」「Client は sampling をサポートするか」を セッション開始時点で確定させる仕組みになっています。
// Client → Server: initialize
{
"jsonrpc": "2.0",
"id": 1,
"method": "initialize",
"params": {
"protocolVersion": "2025-11-25",
"capabilities": {
"sampling": {},
"roots": { "listChanged": true }
},
"clientInfo": { "name": "Claude Code", "version": "2.1.142" }
}
}
// Server → Client: initialize result
{
"jsonrpc": "2.0",
"id": 1,
"result": {
"protocolVersion": "2025-11-25",
"capabilities": {
"tools": { "listChanged": true },
"resources": { "subscribe": true },
"prompts": {}
},
"serverInfo": { "name": "salesclaw-mcp", "version": "0.1.0" }
}
}その後、Client は tools/list、resources/list、prompts/list 等を発行し、LLM が必要に応じて tools/call でツールを呼びます。Server から Client への request も発行でき、典型例は sampling/createMessage (Server が「この続きを LLM に書かせてほしい」と頼む) や roots/list (Server が「どのディレクトリで動いていいか教えて」と聞く) です。

4. プリミティブ——サーバ機能 3 種 + クライアント機能 3 種
MCP の機能はすべてこの 6 つのプリミティブに分解されます。仕様書のサーバ機能一覧表 (modelcontextprotocol.io/specification/2025-11-25/server) は次のように 「誰が制御するか」 で 3 種を分けています。
サーバ機能 3 種 (Server Features)
| プリミティブ | 誰が制御 | 役割 | 代表メソッド |
|---|---|---|---|
| Resources | アプリ制御 | 構造化データ・コンテキスト (ファイル、Git 履歴等) | resources/list, resources/read |
| Prompts | ユーザ制御 | テンプレ化されたワークフロー (スラッシュコマンド、メニュー項目) | prompts/list, prompts/get |
| Tools | モデル制御 | LLM が呼び出して副作用を起こす関数 (API POST、ファイル書込) | tools/list, tools/call |
この 3 種は 誰が呼ぶかで根本的に違います。Resources は「Host アプリが UI で選んで添付する」、Prompts は「ユーザがスラッシュコマンドや menu で明示的に発火する」、Tools は「LLM が自分の判断で発火する」——同じ「Server が公開する機能」でも、安全性のレイヤーが大きく異なります。たとえば「ファイルを削除する Tool」を作ると、LLM の判断で発火するため、ユーザの明示同意が常に問われます。逆に「ファイル一覧を Resources として公開」しておけば、ユーザが UI で選んだときだけ Host が読みに行きます。

クライアント機能 3 種 (Client Features)
反対方向 (Server → Client) の機能は次の 3 つです。これらは Client が能力として宣言したときだけ、Server から呼び出せます。
| プリミティブ | 役割 | 使い所 |
|---|---|---|
| Sampling | Server が「LLM にこの続きを書かせて」と Client に依頼 | エージェント型 MCP サーバ。再帰的に LLM 呼び出しが必要なケース |
| Roots | Server が「どの URI / ディレクトリで動いていい?」と Client に問い合わせ | Filesystem 系の Server。動作範囲をユーザに申告 |
| Elicitation | Server が「ユーザに追加で聞きたい」と Client 経由でフォーム提示 | パラメータ不足時に、ハードコード default ではなくユーザ確認を取る |
Elicitation は 2025-06-18 仕様で追加された比較的新しいプリミティブで、Server 側に「ユーザに確認を取る道」が初めて開かれました。それまでは「足りない情報はサーバが推測 or エラー」しかなかったため、設計のクリーンさが大きく上がっています。
5. 主要 AI ツールの MCP 対応状況と Sales Claw 実装イメージ
Host 別 MCP 対応マトリクス
| Host | 設定箇所 | 対応トランスポート | 補足 |
|---|---|---|---|
| Claude Code | claude mcp add / .mcp.json | stdio / Streamable HTTP | code.claude.com/docs/en/mcp |
| Claude Desktop | claude_desktop_config.json | stdio / Streamable HTTP | claude.ai/directory にリモートサーバ一覧 |
| ChatGPT | Apps (旧 Connectors) | Streamable HTTP | 2025-12-17 に Connectors → Apps へ改称 |
| OpenAI Codex | ~/.codex/config.toml | stdio / Streamable HTTP | developers.openai.com/codex |
| Gemini CLI | ~/.gemini/settings.json | stdio / SSE / HTTP (OAuth 2.0 対応) | プロジェクト設定が user 設定を上書き |
| VS Code | .vscode/mcp.json | stdio / Streamable HTTP | Copilot Chat の MCP servers タブから管理 |
| Cursor | .cursor/mcp.json | stdio / Streamable HTTP | cursor.com/docs/context/mcp |
重要なのは 「設定方法は違っても、向こう側で動く MCP サーバは同じバイナリでよい」 という点です。これが MCP のオープンプロトコルとしての価値です。Claude Code 用に書いた MCP サーバを、Gemini CLI からも Cursor からも同じように呼べます。
Claude Code への MCP サーバ追加例
# stdio サーバ (ローカルプロセス) を追加
claude mcp add salesclaw -- npx -y @salesclaw/mcp-server
# Streamable HTTP サーバ (リモート) を追加
claude mcp add --transport http salesclaw https://mcp.salesclaw.site
# .mcp.json でプロジェクト共有 (チーム全員で同じ MCP サーバ構成)
cat > .mcp.json <<EOF
{
"mcpServers": {
"salesclaw": {
"type": "stdio",
"command": "npx",
"args": ["-y", "@salesclaw/mcp-server"],
"env": { "SALESCLAW_API_KEY": "${SALESCLAW_API_KEY}" }
}
}
}
EOFGemini CLI への MCP サーバ追加例
# ~/.gemini/settings.json (ユーザ設定) に MCP サーバを追加
cat >> ~/.gemini/settings.json <<EOF
{
"mcpServers": {
"salesclaw": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@salesclaw/mcp-server"],
"env": {
"SALESCLAW_API_KEY": "$SALESCLAW_API_KEY"
}
}
}
}
EOFSales Claw を MCP サーバ化する実装イメージ
Sales Claw は、ポリシー制御・送信前自動検査・営業 NG 検出・CAPTCHA 検出時停止・送信頻度制限・監査ログ保存・自動停止条件によって、誤送信と規約違反リスクを下げる設計の OSS ツールです。これを MCP サーバ化すると、Claude / ChatGPT / Cursor / VS Code / Gemini CLI 等から「同じインターフェースで」呼び出せるようになります。
Sales Claw MCP サーバが公開する Primitive のたたき台は次のようになります (設計案、実装は段階的に進めます)。
| Primitive 種別 | 名前 (たたき台) | 役割 |
|---|---|---|
| Resources | salesclaw://leads/{id} | 企業リスト・営業先 1 件の構造化データ |
| Resources | salesclaw://action-log | 過去の送信履歴・監査ログ (read-only) |
| Prompts | /draft-outreach | 業界・接点別の文面テンプレ生成ワークフロー |
| Tools | preflight_check | 送信前の自動検査 (営業 NG / 規約 / CAPTCHA / Compliance Footer) |
| Tools | submit_form | 問い合わせフォーム送信 (preflight_check 通過時のみ実行) |
| Tools | list_recent_submissions | 直近の送信状況 (件数 / 状態) の取得 |
この設計の肝は preflight_check と submit_form を 意図的に分割している点です。LLM (Claude / ChatGPT) が submit_form を直接呼ぼうとしても、Sales Claw サーバ側で「事前に preflight_check が pass している状態」しか受理しないよう実装することで、Host 側の --permission-mode 設定とは独立した 第 2 防御層を作れます。Tools 仕様の 「任意コード実行と等価」 前提への、設計レベルの応答です。
Sales Claw 社内検証 (約 300 件の問い合わせフォーム自動送信を 自律ループ + 並列バッチ + Hooks 経由の event-loop 監視で運用観察した結果) からは、MCP サーバ化した場合でも、(1) goal / 件数上限 / 経過時間上限の AND 終了条件、(2) CAPTCHA 検出時の awaiting_approval 状態保持、(3) Compliance Footer の自動付与、(4) 監査ログによる subagent 単位の追跡、(5) 営業 NG 検出時の即停止——これら 5 つの検証条件はすべて Server 側で組む必要がある、というのが現時点の運用観察です。エンタープライズ向けに展開する場合はさらに、テナント ID 単位の Resources 分離が必須になります。
# MCP Inspector でローカル開発しながらデバッグする例
npx -y @modelcontextprotocol/inspector npx -y @salesclaw/mcp-server
# Claude Code から呼ぶ
claude mcp add salesclaw -- npx -y @salesclaw/mcp-server
# Claude Code 内で: 「@salesclaw preflight_check してから @salesclaw submit_form してください」
MCP サーバを自作する開発コスト試算

| シナリオ | 所要 (試算) | 想定内容 |
|---|---|---|
| Hello World 動作確認 | 約 1 人日 | 公式 SDK でツール 1 個を作り、Claude Code から呼べる状態に |
| 既存 REST API ラップ | 約 5 人日 | 既存社内 API 3〜5 本を Tool として公開、テスト・ドキュメント込み |
| 業務ロジック含むフル新規 | 約 12 人日 | Resources / Tools / Prompts を一通り実装、認可フロー込み |
| マルチテナント本番運用 | 約 22 人日 | Streamable HTTP + OAuth 2.0 + 監査ログ + 料金計測 + セキュリティレビュー |
変動幅は ±30〜50% を見込んでください。とくに「セキュリティレビュー」と「Tool 単位の権限設計」は組織の成熟度によって 2〜3 倍ぶれます。
6. MCP の安全性とリスク——Tool Safety / Sampling Consent / データ越境
MCP は「任意コード実行と等価のツールを Host と Server の間で扱う」プロトコルです。仕様書のセキュリティ章は、MCP 自身が プロトコルレベルでこれを強制できない ことを明言し、実装側 (Host / Server 両方) に責任を委ねています。Sales Claw を MCP サーバ化する場合も、Sales Claw 単独で運用する場合も、以下のリスクを自動検査で下げる設計を採用します。
ツール安全性 (Tool Safety)
- Tool description を信用しない: 仕様書は明確に「Tool description annotations should be considered untrusted」と述べる。LLM がツール名と説明だけ見て呼ぶ実装は危険
- ユーザ同意を取る: 副作用のあるツール (送信・書込・削除) は、Host が必ずユーザに確認を取る (Claude Code の
--permission-mode default/ask等) - Server 側の二段防御: Host で「許可された」だけでは不十分。Sales Claw のように
preflight_check → submit_formの順序強制を Server 側 で実装する
サンプリング同意 (Sampling Consent)
- Server による暴走を防ぐ: Sampling は Server が「LLM にこの続きを書かせて」と Client に要求する機能。仕様書は「ユーザは明示的に承認する必要がある」と義務化
- Server に見えるプロンプトを制御: 仕様書は「protocol intentionally limits server visibility into prompts」と述べ、Server が会話全体を見れない設計に
データ越境とプライバシー
- 明示同意なしのデータ転送禁止: 仕様書は「Hosts must not transmit resource data elsewhere without user consent」と義務化
- Server 間のサイロ化: Client は 1:1 で Server とセッションを張るため、Server A の情報が Server B に漏れない (Host が明示的に渡さない限り)
- 監査ログ: Sales Claw のように送信ログを Resources として残し、後追いの監査を可能にする
MCP 導入で残るリスク
プロトコル設計と Server 実装の両方で配慮しても、以下は構造的に残ります:
- 悪意ある第三者 MCP サーバ: Cursor や Claude Desktop でユーザが任意の MCP サーバを追加できる → 「画像生成サーバを装ったキーロガー」が技術的に可能。Anthropic Directory のような審査付きディレクトリ経由を強く推奨
- Tool description prompt injection: Server 側の Tool description に細工して LLM の挙動を誘導する攻撃。Host で description を表示しユーザに確認を求める実装が防御策
- Streamable HTTP の認可不備: リモート MCP サーバの認可を OAuth 2.0 で組まずに API key を URL に埋め込むなどの実装ミス
- Sampling 経由のコスト爆発: Server が再帰的に sampling を要求すると、ユーザの API 利用料が予想外に膨らむ。Host 側のレート制限が必須
7. 実運用前チェックリスト
MCP サーバを自作して本番に投入する前、または信頼性が不明な MCP サーバを Host に追加する前のチェック項目です。
MCP を実運用に投入する前に
- MCP サーバの提供元が信頼できるか確認した (公式 Directory / 自社開発 / 監査済みコミュニティ)
- Tool description を Host UI で表示し、ユーザが内容を確認できる状態にした
- 副作用ありの Tool (送信・書込・削除) は --permission-mode を default または ask にした
- Server 側でも「preflight_check → submit_form」のような順序強制を実装した
- Streamable HTTP サーバは OAuth 2.0 で認可している (API key URL 埋込なし)
- Sampling を使う MCP サーバは Host 側のレート制限と API 予算上限を設定した
- 監査ログ (Resources) で過去の Tool 呼び出しを後追い可能にした
- Compliance Footer (送信系の場合) は Server 側で自動付与する設計にした
- リモート MCP サーバは localhost / VPN 内に限定し、公開ネットワークに晒さない
- 100 件規模のサンプルで preflight_check の通過率と誤検知を計測した
8. まとめ——AI コーディング拡張の「土台技術」として MCP から何を学ぶか
MCP は 「AI 用 USB-C ポート」という分かりやすい比喩で語られますが、その本質は Language Server Protocol の AI 版として、LLM アプリと外部システムの N × M フラグメンテーションを 1:N に整理しなおすプロトコル抽象化です。Host / Client / Server の 3 層、JSON-RPC 2.0、Resources / Tools / Prompts / Sampling / Roots / Elicitation の 6 プリミティブ、そして「Tool 実行は任意コード実行と等価」という強い前提——これらは 2025-11-25 版仕様で安定しています。
Sales Claw 開発者の視点からは、MCP は「Sales Claw が呼び出される側 (Server) にも、呼び出す側 (Host 内 Client) にもなれる」という意味で、AI 営業自動化のアーキテクチャを根本から拡張する技術です。送信前自動検査をプロトコルレベルで強制する設計を MCP の Tool 順序制御で実装すれば、Claude / ChatGPT / Cursor のどの Host から呼ばれても、Sales Claw の安全設計は同じように働きます。
次のアクション: 自社で MCP サーバを 1 つ作るなら、まず modelcontextprotocol/servers リポジトリの Everything サーバを読んでください。Resources / Prompts / Tools の最小実装が一つに収まっており、SDK の使い方も同時に学べます。Sales Claw の運用設計に組み込むなら、 クイックスタートガイド から始めて、まず preflight_check の自動検査ロジックを理解するところから入るのが最短です。
よくある質問
Model Context Protocol (MCP) とは何ですか?
なぜ「AI 用 USB-C ポート」と呼ばれているのですか?
MCP サーバと MCP クライアントの違いは何ですか?
Resources / Tools / Prompts はどう使い分けるのですか?
Sampling / Roots / Elicitation は何のためのクライアント機能ですか?
Sales Claw を MCP サーバ化するとどんな運用が可能になりますか?
MCP を導入したときに残るリスクは何ですか?
参考文献
本記事は X 公式アカウントと公式ドキュメントを一次情報として参照しています。
- [01]
- [02]MCP Specification 2025-11-25 — Overview2025-11-25
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- [04]
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- [08]
- [09]
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